2015年5月8日金曜日

NHK土曜ドラマ「64」が面白い

現在放映中のNHK(10:00~)の
ドラマ「64(ロクヨン)」が面白いです。
http://www.nhk.or.jp/dodra/rokuyon/
※5/16(土)が最終話放送

<ざっと紹介>
主人公は、県警広報室の室長・三上(ピエール瀧)
何か事件が起こった際に、
「被害者や犯人の個人情報をどの程度明らかにするか」
マスコミ向けの警察発表を取り仕切る仕事です。

ドラマは昭和64年に管轄内で発生した、
少女誘拐殺害事件が近々、時効を迎えるに当たり、
突然、警察庁長官が遺族を慰問しに来る、
というところからスタートします。

少女誘拐殺害事件の元担当刑事ということから、
その遺族対応・マスコミ対策を任された三上ですが、
遺族からは慰問拒否、記者からは取材ボイコットを言い渡されます。

理由が分からないまま、事態を打破しようと
当時の関係者のもとを駆けずり回る三上ですが
関係者はみな事件に関して口を閉ざすばかり。
やがて、三上は少女誘拐殺害事件に隠された
巨大な警察内部の不正に気付いてしまいます。

長官慰問の日程が迫るなかで、
刑事仲間からは「刑事に戻りたければ、黙っていろ」と脅され
記者連中からは「警察なんか信用できない」と叩かれ
部下からは「自分の正義だけ貫けばそれで満足なんですか」と突き上げられる中、
三上は果たして、どんな決断を下すのか。

<ここが面白い>
「県警広報室」という舞台は
刑事モノとしては、かなり目新しいと思います。
多少、取っつきにくい感じもしますが
・上層部から不正・隠蔽の片棒を担ぐよう命じられる
・記者や部下からは正義を盾に突き上げを食らう
理想と現実のはざまで板挟みになって苦悩する姿は
まさに「THE中間管理職」。
その悲哀は、一般企業となんら変わりありません。

おまけに三上は現在、高校生になる娘が失踪中で安否不明。
醜形恐怖症に陥った娘の「整形したい」という思いを理解できず、
無理に引っ張り出し、顔を叩いてしまった…
「自分のせいだ」と強く自分を責めています。

中間管理職として、元刑事として、父親として
主人公の三重苦が、ドラマをたまらなく面白くさせています。

<印象的なシーン>
三上の部下である広報室の女性職員が、
決裂した記者との関係を修復しようと
記者を接待する(飲みに出かける)のですが
それを知った三上に「お前が汚れ仕事をすることはない」と
一喝されるシーンがあります。
これに対して、女性職員が言った台詞がものすごくいいです。

「汚れ仕事は自分だけでやって、
 キレイなところは全部私に押し付けて、
 それで自分にはまだ汚れていない部分があるなんて、
 ……そんなのずるいです」

この台詞は、女性職員に自らの娘を重ね合わせ、
いつまでも子離れできていなかった三上の心を
ズギューンと打ち抜きます。

どちらが間違っているという、
単純な善悪の問題ではなく、
三上には三上の正義があって、
女性職員には女性職員の正義がある。
世の中には、一人ひとりに立場があるわけです。

娘(女性職員)を守りたい一心で
結局は、自分の正義しか考えていなかった。
そのことに気づいた三上は、
この夜を境に変わります。
部下を信じる、記者を信じる、そして娘を信じるようになります。

ドラマの重要なターニングポイントを
台詞一つでしっかり描いた、本当に素晴らしいシーンだったと思います。

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