2015年10月15日木曜日

映画目録「ブレッドアンドローズ」

<あらすじ>
姉を頼りに、メキシコからLAにやってきた移民のマヤ。姉のローサの紹介で、清掃員として働きだすが、そこは移民の弱みに付け込んで低賃金でこきつかう「今でいうBLACKな環境」だった。そんな中、マヤは偶然、労働組合員のサムと知り合う。「声を上げなければ、自分達の権利は勝ち取れない」と説くサムに心惹かれ、運動にのめりこんでいくマヤ。一方、病気の夫や子供二人を養うのに手一杯のローサは、それを冷ややかな目で見つめる。
<多分ここが面白いところ>
・マヤとサムの出会いが素敵
警備員に追われているサムを、清掃員のマヤがかくまってあげることで二人は知り合うのですが、そのコミカルなやりとりは「ローマの休日」を思い起こさせます。マヤは不法入国の移民。サムは組合の白人男性。身の上の異なる二人を「互いに意識させる」のに十分な出会いだったと思います。
・マヤが可愛い!
マヤは、若くて世間知らずで、とても勝気で、そしてものすごく素直な性格です。嬉しいことがあればもろ手を挙げて喜び、納得いかないと思えば手をぶんぶん振って異を唱える。思い込んだら、すぐに行動に移しちゃう。午前3時だろうが、お構いなし。移民=可哀想という図式が一般的だし、事実、その通りなのですが「移民という社会問題」をそのまま取り上げようとすると、どうしても映画が重たくなりがちです。その点、陽気なマヤのキャラクターがずいぶん、映画の印象を救っていると思います。
<印象的なシーン>
運動に手を染めた同僚を会社に密告した姉のローサを、「裏切り者!」とマヤが詰め寄り、それに対してローサが言い返すシーンがあるのですが、それがとにかく堪えます。早くに米国に渡ったローサは、長い間、メキシコにいる家族に送金してきましたが、実は、その金はローサが売春した金、文字通り体で稼いだ金だったのです。それに、そもそもマヤがLAで清掃員の仕事につけたのも、ローサが係の男にやらせてやったから…(涙)。「黒いのも、白いのも…私は世界中のチンポをくわえてきた。いつも尻拭いは私。かわいそうなローサ。誰も同情してくれない」そう言って、自分をせせら笑うローサに、「私は知らなかったの。何も知らなかったの」というだけのマヤ。どこのどんな世界でもそうですが「唯一絶対の正義」というものは存在しません。生きる人の数だけ、言い分があります。マヤの中の正義が大きく揺らぐのと同時に、移民達が置かれている絶望的な状況をよく表している、とてもいいシーンだと思いました。

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