2015年1月15日木曜日

映画目録「永遠の僕たち」

<あらすじ>
両親を自動車事故で一瞬にして失った少年。両親の死を上手く受け入れられず、無気力な毎日を送る。挙句に、他人の葬式に遺族の振りをしてもぐりこむ始末。ある時、脳腫瘍のため余命いくばくかの少女と知り合う。「死」という共通因子によって、徐々に惹かれあい、つかの間のデートを楽しむ二人。そんな少年を心配そうに見守る特攻隊員の幽霊。二人は「生きる喜び」を知ることで、逆に、それを失う事、別れ、「死」と向き合わざるを得なくなる。

<多分ここが面白いところ>
・大まかにくくれば、「命(生死)を軽んじている少年・少女が、互いへの愛(思いやり)によって、畏敬の念を取り戻していく」という話なのだが、その「軽んじてる」感じが、たとえば、「葬儀ごっこ」「お辞儀の振り」「切腹の真似事」「死体置き場でデート」「ハロウィンはゾンビでコスプレ」「死んだふり(演技)」など、細かい描写でよく描かれている。
・一番感じ入ったのは、やっぱり最初と最後の違い。冒頭の葬儀場のシーンでは、少年は黒い喪服をまとって悲しむ振りをしているけれど、悼む心がちっともない(カタチだけで内面が伴わない)。それに対して、ラストシーンでは、服はカジュアルで、しかも笑顔だけど、心から少女の死を悼んでいる(カタチよりも内面の充実)。起承転結の「起」「結」が見事に結ばれている。すごい。
・加瀬亮さんが演じる特攻隊員の幽霊が、抜群に存在感があります。お辞儀を説いたり、原爆をからかわれて凹んだり、死を虚無だという少年を殴り飛ばしたり…。幽霊の癖に、妙に普通っぽい。最後の遺書の独白は、おそらく、本物の遺書をベースにしているのだと思います。『私はバンザイではなく、君の名を叫んで死んでいく』。すごく感動しました。

<印象的なシーン>
やはり、遺書の独白のシーンではないでしょうか。独白の内容もさることながら、二人がデートした思い出の場所、葬儀場、公園などがフラッシュバックして、しかも、雪に埋もれていくわけです。挙句、道路に横たって二人で描いた「死体発見」のチョークも風で舞い散る。これがガスヴァンサントの思い描く「死」なんですね。少年が恐怖するような虚無ではない。でも、ゆっくり、じっくりと風化していく。いい意味でも悪い意味でも。だからこそ、少女との思い出を振り返り笑って偲ぶラストシーンが、切なく、そして温かく感じられました。

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