2015年3月20日金曜日

映画目録「夫婦善哉(めおとぜんざい)」

<あらすじ>
舞台は昭和初期。大問屋の若旦那と芸者が、かけおちするところからドラマは始まる。その仲を何とか周囲に認めさせたい若旦那だが、癇癪を起した父親から勘当されてしまう。不憫に思った芸者は「わたいがあんたを一人前の男にしたる」と必死で気張るが、若旦那は「いつか実家に戻れる」と楽天的で一向に働く様子がない。そのうち、妹の婿養子に実家を牛耳られてしまうが、それでも未練たらたら。自立しようと色々商売に手を出すが、ことごとく上手くいかない。やがて腎臓病まで病むように。そんな若旦那を時に罵り、時におだて、時にひっぱたき、かいがいしく支える続ける芸者。そんな内縁の夫婦生活を丁寧に描いた描いた作品です。
<多分ここが面白いところ>
・何事にも楽観的で、調子だけよくて、いざとなると何もできない気弱な若旦那。真面目で自立心も旺盛だが、いざとなると無鉄砲な気の強い芸者。夫婦の対比されたキャラクターが抜群です。大阪弁もイキイキしていて、二人のやりとりを見ているだけでも十分面白いです。シナリオセンターで教科書的に扱われ、「一度は見ておくべき」と言われているのも納得です。作られたのは昭和30年(1955年)と言いますが、時代を経ても全く色あせていません。
・若旦那のダメっぷりですね。妻子ある身で女とかけおちして、実家を追い出された後も「金をよこせ」とせびりにいき、番頭相手に「俺が店を継いだらお前を大番頭にしてやる」と幅をきかせ、身を寄せた芸者の両親の実家を「小汚い家だ」とののしり、芸者が働いている間は寝ていて、夜になると芸者がコツコツ貯めた金で飲みに出かける。まったくどうしようもない奴です。ドラマの過程で「捨てた娘への愛情に気づく」「芸者への感謝・謝罪の念を覚える」などターニングポイントもいくつか用意されているのですが、それでも一向に、立ち直らない。作り手のご都合主義に走らないダメっぷりが、見ている側にはリアルで、秀逸です。
<印象的なシーン>
芸者が若旦那を、叩いたり、引っ張ったり、蹴ったりするシーンが多々見受けられます。これが、コミカルでとても面白いです。映画としては重苦しい・単調な題材なのに、これだけコミカルで面白いのは、このシーンのおかげだと思います。でも、昭和初期にこういう男女関係ってあったのでしょうか。もしあったとしたら、男女関係って、今も昔もあんまり変わってないんですね。いつの時代も、女性は強いものです。

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