『天才探偵ミタライ~難解事件ファイル「傘を折る女」~』
というドラマが放映されました。
これは、島田荘司さん原作の小説「御手洗潔」シリーズの、
ファン待望のドラマ化です。
これまでどれだけTV局からオファーを受けようが
「日本人なんかに御手洗は任せられない」と断固拒否していた島田さんですが、
たぶん、お年を召して、考え方が変わったんでしょうね。
最近では漫画化も果たしました。
映画化・ドラマ化も時間の問題と言われていましたし。
主演は
・御手洗潔→玉木宏さん
・石岡君→堂本光一さんです。
※玉木さんは、島田さんたっての希望だそうです。
・御手洗潔→伊勢谷友介(イケメンで知的で野性味がある人がいいです)
・石岡君→坂口憲二or海老蔵(マッチョで一途な感じの人がいいです))
をイメージしていたのですが。
断っておきますが、私は“御手洗潔の大ファン”です。
中学生の時に初めて「異邦の騎士」を呼んで以来、20年以上。
もちろん、作品はすべて目を通しています。
だから、言う権利があるとまでは言いませんが(笑)
せいぜいドラマを見ながら
「ここはもうちょっとこうしてほしい」
「いや、ここはこうだよ!」
なんて、やいのやいの言いながら楽しもうと思っていたのです。
思っていたのですが……演出・脚本がひどすぎて、
途中でそれさえもやめてしまいました。
●“御手洗潔”の魅力が全く描かれていない
ドラマを一緒に見ていた妻に途中で
「ミタライって何か感じ悪いね」と言われました。
「何で?」
「だって、無口で、無愛想で、女嫌いじゃん」
…いやいやいやいやいや、ちょっと待って下さい。
そんなの、御手洗の表面的な特徴でしょ。
たとえば、無口なのは、喋るのが面倒だからでしょ。
喋るのが面倒なのは、会話・状況を先読みできるからでしょ。
それぐらい、御手洗は頭がよすぎるの。そういうことなの。
それに
・無口じゃないよ、饒舌だよ(人をからかう時のお喋りはすごいんだから)
・無愛想だけど、意外に優しいんだ(数字錠の話なんか、泣けるよ)
・女嫌いな分、犬が好きなんだ。犬を死ぬほど愛してるんだ面白いだろ。
…何で私が弁解しなきゃいけないんでしょうか。
でも、何も知らない妻が見て、そう思うんだから、
世間一般の人はミタライのことを
「感じ悪い」「とっつきにくい」そう思ったんでしょうね。
中には「ガリレオの二番煎じ」と思った人もいるかもしれません。
残念です。これだけ魅力のある人なのに…。
にしても、悔やむべきはお粗末な演出・脚本です。
ここまでくると、役者さんのせいではありません。
「脚本の人、何やってんだろうな」
途中から、御手洗のファンではなく、作り手の視点で見てしまいました。
以下、気づいたところです。
●動きがなさすぎる
確かに、御手洗は頭だけを働かせる「安楽椅子探偵」ですが
それはあくまで小説の話。映像のあるドラマでは
会話だけで推理を追うのは無理があります。何より、退屈すぎます。
御手洗はバイクに乗れるし、喧嘩も強い。
スーパーマンぐらいの設定で、いいはずなのに・・・。
●余計なキャラに余計な時間を使いすぎている
ドラマに出てくるキャラクターには、2つの意味があると思います。
1つには「主人公のキャラを際立たせるための役どころ」
もう1つは「そのキャラそのものが魅力的」
結論から言うと、刑事2名はどちらの意味でも必要なかったと思います。
彼らがいてもいなくても、事件には大差なかったのではないでしょうか。
残念です。彼らに割いていた時間があったら、
御手洗というキャラクターを掘り下げて描くべきだったと思います。
●そもそも、この題材を選ぶべきではなかった
なぜ「傘を折る女」を選んだのでしょう。これはそもそも短編です。
いくら膨らませるにしても、2時間にするには無理があります。
また、既に終わってしまったことを後から暴き出すという話であり
絵的にも、冒険活劇にもなりにくいという問題があります。
同じ短編でも「山高帽のイカロス」とか「ある騎士の物語」とか
「数字錠」とか「UFO大通り」とか他に、もっとあったと思います。
いくつかを組み合わせるとか…できたはずなのに。なぜ、これを。。。
●石岡君を語り手にすべきだった
御手洗シリーズは、シャーロックホームズと同じく、
「パートナーが語り手となる」という形をとっています。
つまり、石岡君がワトソンの役割を果たすわけです。
愛情あるフィルタリングのおかげで、
読んでいる側(見ている側)も安心して、物語に没頭できるのです。
私は、今回のドラマも、石岡君のナレーションを入れるなりして
その形をとるべきだったと思います。
そうすれば、御手洗の紹介もかなり容易にできたはずです。
そうすれば、古い事件も、回顧録として使えたはずです。
何より、石岡君の視点で、安心して見ていられたはずです。
…あげだしたら、きりがなくなってきました。
とにかく、とてもとても残念です。それしかありません。
島田さんも「これでOK」と言ったのでしょうか。
むしろ「これでいけ」とでも言ったのでしょうか。
そう考えると、ますます残念でなりません。
追記:
http://kodanshabunko.com/mitarai.html
記事が出ていました。
やはり、島田さんがほぼすべてを決めていたようですね。
島田さんに言われたら、そうせざるを得ないでしょうね。
現場ももどかしかったと思います。合掌。
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