2015年4月21日火曜日

映画目録「息もできない」

<あらすじ>
暴力的な借金取りと、男勝りで勝気な女子高生。実は、借金取りは幼い頃の父親のDVがトラウマとなり今も悩まされおり、女子高生は呆けた父親の介護とぐれた弟の世話に追われ、二人とも自分の人生を投げ出しかかっていた。ひょんなことから知り合った二人は、互いを罵倒しあいながらも、徐々に距離を縮めていく。ちなみにキャッチコピーは「二人でいる時だけ、泣けた」だけど、恋愛映画ではありません。
<多分ここが面白いところ>
・「息もつかせない」ような暴力シーンの連続
喧嘩とか大立ち回りとかそういうのではありません。男が女を殴り、父が息子を殴り、借金取りが債務者を殴る。強い立場の者が、弱い立場の者を痛めつける、見ていて嫌になるような、生々しく、痛々しい暴力です。しかも、その暴力は、親から子供へ、兄貴分から弟分へ、どんどん連鎖していきます。多くの場合、劣悪な環境に生まれ育った故のことで、彼ら自身にほとんど非はありません。見続けていると、「可哀想」という同情を超えて、こっちも苦しくなってきます。たとえるなら、水の中で息を止めているような感覚です。ここまで引き込まれる映画も珍しいと思います。
<印象的なシーン>
この作品は、主に「暴力」をテーマにした作品です。暴力によって、何がどうなり、それがどういう影響をもたらすかをリアルに描いた作品です。映画のメッセージはどこにあるのか…許しだけが暴力を止める?愛は暴力の連鎖を断ち切る?…ずっと考えながら映画を観ていたのですが、衝撃的なラストを見て、理解しました。「暴力は連鎖する」それがこの映画が伝えたい唯一無二のメッセージだと思います。たとえ傷が癒えたとしても、暴力は見えないところで連鎖していくのです。違う展開はいくらでも用意できたと思いますが、そのことに殉じた製作者には恐れ入ります。

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