作は前田司郎さん。
NHKドラマ「徒歩7分」の演出・脚本を手がけている方です。
「こんなすごいのを作る人が今まで無名だったはずがない」
と思い調べてみたとこら、やっぱり有名でした。
いくつか作品があったのですが、
その中でひときわ目をひいたのが
「生きてるものはいないのか」です。
これは戯曲で、前田さん自身の演出で舞台化もされており、
2007年に演劇界の芥川賞と呼ばれる
「岸田國士戯曲賞」を受賞しています。
あらすじだけ言うと、
「どんどん人が死んでいく」という話です。
そんだけ?という感じもしますが、
そんだけです。
ホラーでもなければ、サスペンスでもありません。
しいて言うなら、不条理劇です。でも、どこかコミカルです。
二股で女に責められている男、
赤ちゃんを下ろすか産むか悩んでいる女、
刑務所帰りに義理の妹に会いに来た男、
結婚式の披露宴の出し物に悩んでいる学生、
大学に通う現役のアイドル、同性愛者の男etc
劇には20名近くの色んな人が出てきます。
みんな、それぞれに思い悩んでいます。
大体はくだらないことですが、その人なりに、悩んでいます。
でも、何の前触れもなく、いきなりのたうち回って死にます。
死ぬ理由は「ウイルス」というだけで、詳しい説明はほぼありません。
普通のドラマなら、ここで「原因究明」→「解決」となるのですが、この劇は違います。
※「根っこ」を見せないというのは、前田さんの作品に共通しているのかもしれません
何だかよく分からない間に、ばたばた死んでいきます。
カッコよくもないし、華々しくもありません。
どちらかというと、みっともなく死んでいきます。
面白いなあと思ったのは、
「死んだ人が舞台に転がったまま」ということ
これ、よく考えてみたら、斬新ですよね。
実際には死んでないけど、死んでる体で、ずっと横たわるんですよ。
映画じゃなくて、演劇だからこその面白さだと思います。
もし、ライブの劇で見てたら…
僕なんかへそ曲がりだろうから、
「こいつ動かないかなあ」なんて死体役の人をじろじろ見てたかも。
結局、何が言いたかったのか、
劇中では明かされませんでした。
でも、とにかく面白かったです。
僕が思ったのは
・訳が分からず生きている人は、訳が分からないまま死んでいく。
・ほとんどの人間は、死んだように生きている。
・生きるということは、日々、死に向かっているということだ。
みたいなところでしょうか。
何より、タイトルがいいですよね。
『生きてるものはいないのか』
渋谷の雑踏で叫んだだけで、現代社会に波紋を呼びそうです。
0 件のコメント:
コメントを投稿