2015年2月20日金曜日

前田司郎さん『ジ・エクストリーム・スキヤキ』を読む

NHKドラマ「徒歩7分」で魅せられ、
すっかりはまってしまった前田司郎さん。

立ち寄った本屋で最新作の小説
『ジ・エクストリーム・スキヤキ』を見つけたので
先日、ハワイに出かける際に
飛行機で暇だろうからと購入しました。

簡単なあらすじを説明するとい
「男女4人がスキヤキする」という話です。

それだけ?
それだけです。
思うんですが、前田さんの作品はいつも「それだけ」です。
それだけなのに、面白いんです。
だから、すごいんです。

<簡単な流れ>
会社を辞めた無職の男が
大学時代の友人を10何年か振りに訪ねる。
ちなみにそいつは、未だにフリーター。
偶然目にした店頭の「スキヤキ専用鍋」に魅せられた男は
よく分かんないけど「みんなでスキヤキやろう」と言い出す。
で、2人だけじゃあれなんで、ということで
大学時代の元恋人に声をかけ、
更にその後輩の小悪魔的女子が加わる。
ぼろい車に乗った4人は、あてもなくドライブする。

読み進めていくと、
「大学時代の共通の友人が死んで
 それをきっかけに疎遠になった」
ということが分かってくるのですが、
例によって、そいつが何で死んだかは明かされません。
死ぬまでに複雑な人間関係があった(誰と誰が好き同士で、誰と誰が付き合ってたとか)
ようなのですが、それも明らかにはされません。

それだけじゃありません。
・主人公が、何で会社辞めたのか
・その友人が、何でフリーターを続けてるのか
・女が、何で10年ぶりの元彼の誘いにのってきたのか
・小悪魔女子が、何で見知らぬ無職とフリーターの、さえない男達とのドライブにのってきたのか
なーんにも明らかにされません。

みんな孤独で、腹の底に何か抱えてるんですが、
それが何なのか明かされません。
前田さん。相変わらずです。
私達の前に提示されるのは「孤独の上澄み」だけです。

そんな4人が、ラストシーンでね。
ぼろい旅館の一室で、スキヤキをするんです。
こそこそ、隠れて。
「おー」なんて感じで。ちょっと盛り上がったりして。
それが微笑ましくて、また、切ないのです。
そこには、昔、親しかった友人と久しぶりに再会した時の
あの「空気感」が、ものすごくリアルに再現されています。

距離感があるところとか
それに気づかないような振りをするところとか
わざとらしく振る舞って、その距離を埋めようとするところとか
でも、埋まらない、というか、詰め切れないところとか。

「ほんっとうまいよなー」
ハワイのホテルの、無駄にふかふかなベッドの上で、うなってしまいました。

ちなみに、これ、もう映画化されているそうです。
しかも、主演の二人が、井浦新と窪塚洋介。
https://www.youtube.com/watch?v=O9_3Ju3Ded4

…すごいですよね。誰がこのキャスティングしたんでしょうか。
いや、だって、この二人って「ピンポン」の二人ですよ。
スマイルとペコですよ。11年ぶりの共演なんですよ。
それが、10何年振りに再会する友人役?

前田さん、すごい。
ますます尊敬します。
早速DVD頼んじゃいました。
できれば、映画館で観たかった―。

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