2015年2月23日月曜日

映画目録「俺たちに明日はない」

<あらすじ>
刑務所帰りの男(ボニー)と、平凡な田舎暮らしに飽き飽きした女(クライド)。未来のない閉塞的な日常を打破するために、銀行強盗を企てる。そこにガソリンスタンド店員と、ボニーの兄夫婦が加わり、いつしか一味は「バロウズ・ギャング」と呼ばれるように。時は、大恐慌時代。資本家の手先である銀行や警察に徹底的に牙をむくバロウズ・ギャングは、土地や仕事を追われた一部の民衆からはヒーロー扱いされるが、警察からは目の敵にされ、徐々に追い詰められていく。
※ボニー&クライドは、実在した銀行強盗犯をモチーフにしているそうです。
<多分ここが面白いところ>
・ボニーとクライドの関係性。ボニーはタフでマッチョですが、性的に自信がありません(肝心な時にたたないEDみたいなものかな)。反対に、ボニーは性的関係を結ぶことに慣れています。当初、ボニーはそんなクライドに嫌悪感すら抱いていますが、犯罪を繰り返す中で、徐々に心と体を許していくようになります。それが、細かくリアルに描写されています。単なる犯罪映画ではなく、どこか「純愛映画」の様相を見せるのは、そのためだと思います。
・説明台詞に頼らず、心情や境遇をよく言い表しています。たとえば、冒頭、部屋の中で、素っ裸でウロウロして、ベッドの格子を掴んで歯ぎしりするクライド。これは「抑圧された暮らしに飽き飽きしている」のがよく分かります。ボニーについても同様です。「クライドに興味はあるけれど、性的に自信がないのでセックスできない」という難しい状況を、言葉を使わずに、演技だけで表現しています。
・ボニー&クライドは、自分のためだけに銀行強盗と人殺しを繰り返す、どうしようもない人間達です。本来なら共感性が見いだせないですが、なぜか、それほど憎めません。これは本人達のキャラクターもさることながら、背景にある「大恐慌」という時代性を上手く描いているからだと思います。たとえば、この時代は、多くの農民が、借金のカタに銀行に土地を取り上げられ、生活の糧とプライドを奪われており、「怒り」と「無力感」にさいなまれています。ボニー&クライドには「抑圧する社会体制と闘う」という位置づけがあるため、見ている側も、それほど憎めないのだと思います。現題「ボニー&クライド」を、邦題「俺たちに明日はない」と名付けた人はすごいですね。
<印象的なシーン>
ラストです。撃ち殺される寸前、「やばい」というのを察したボニーが、クライドを案じるように見ると、クライドもボニーを見返すんです。そして、見つめ合う。時間にしてほんの1秒足らずですが、これが愛し合う二人の最期って感じで、すごくいいです。回想だのカットバックだのに頼らずとも、これだけで、関係性を上手く表現できるんですね。勉強になるというか、「映画ってすげえな」と改めて思いました。



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